サルコペニアを予防するために高齢者がまずやるべき5つの筋トレ

サルコペニアとは

サルコペニアとは加齢などにより、筋肉量や筋力が低下することを言います。それにより、「疲れやすい、歩行スピードが低下する、不調を引き起こしやすい、転倒しやすい」といった日常生活での問題が多くなってきます。

サルコペニアは寝たきりや要介護の入り口とも言えるので、しっかり予防をしていくことが、快適な高齢期を過ごすためには必須になります。

 

サルコペニアの診断基準

1.筋肉量の低下
2.筋力の低下
3.身体機能の低下
日本老年医学会,大内尉義総監修:サルコペニア:定義と診断に関する欧州関連学会のコンセンサスの監訳とQ&A.より引用

1.は体組成計などで数値として実数値がわかります。2.3.に関しては、運動負荷テスト(例えば腕立て伏せを何回できるかなど)や、身体機能チェック(片脚立ちなど)で計測することができます。

サルコペニアの診断チェックに関しては健康長寿ネットの「サルコペニアの診断」をご覧ください。

 

【普段の歩きでセルフチェック】

また自分で確実にわかることといえば、歩行です。

・歩くのが遅くなった
・歩幅が狭くなった
・ふらついたり、バランスを崩しやすい
・つまづきやすくなった

こういったことがあれば仮にサルコペニアでなくても、日常生活を健全に過ごすための最低限の身体機能が、確実に衰えている証拠です。

 

サルコペニアの分類

サルコペニアは大きく分けて加齢が原因の一次性サルコペニアと、加齢以外にも原因がある二次性サルコペニアがあります。

一次性サルコペニア
加齢性サルコペニア 加齢以外に明らかな原因がないもの
二次性サルコペニア
活動に関するサルコペニア 寝たきり、不活発なスタイル、(生活)失調や無重力状態が原因となり得るもの
疾患に関連するサルコペニア 重症臓器不全(心臓、肺、肝臓、腎臓、脳)、炎症性疾患、悪性腫瘍や内分泌疾患に付随するもの
栄養に関係するサルコペニア 吸収不良、消化管疾患、および食欲不振を起こす薬剤使用などに伴う、摂取エネルギーおよび/またはタンパク質の摂取量不足に起因するもの

日本老年医学会,大内尉義総監修:サルコペニア:定義と診断に関する欧州関連学会のコンセンサスの監訳とQ&A.より引用

 

サルコペニアに陥るパターン

サルコペニアの分類で解説しましたが、サルコペニアになる原因はいくつかあります。しかしサルコペニアになってしまう人の多くは、病気などが原因ではなく運動不足などの生活習慣によるものです。最も多いのは次のようなパターンです。

<加齢により筋力が低下して起こるパターン>
特に運動習慣がない。

加齢により筋力が低下しやすい。

疲れやすくなり、日常生活の活動量が減る

ますます筋力が低下する

この悪循環が最も多いパターンです。疲れやすい、すぐ疲れるといったことから、あまり体を動かさなくなり、それによりますます筋力低下が加速してしまうケースです。ここから抜け出すためには、まず運動を始めて体を動かしていくことです。

 

■栄養不足も大きな原因

運動不足に加え加齢により食事量が減り、栄養不足になることも筋肉量の低下や身体機能低下を加速させてしまいます。特にタンパク質の不足です。筋肉の原材料であるタンパク質の摂取量が少ないため、筋肉が修復再合成されず、徐々に減ってしまうのです。

 

サルコペニア予防の運動

筋トレなどをして筋肉量を増やすことが重要です。運動不足の人が加齢によって顕著に現れるのは、「下半身の筋力低下や股関節の柔軟性低下」です。

それによって疲れやすくなる、バランスが悪くなる、歩きにくくなるといった弊害が起こります。まずは下半身の筋力強化や股関節周囲の柔軟性を改善することを心がけてください。

 

(1)股関節まわし
各10回

股関節が硬いと「立ちしゃがみがしにくい、歩幅が狭くなる、バランスが悪くなる」といったことが起こります。硬くなった股関節周囲の筋肉をほぐして、動きやすい状態に改善していきます。

(仰臥位)
寝た状態で行うことでバランスなどの負荷が低くなります。

股関節まわし

・片方の膝を大きく回すようにします。
・お腹を締める力が弱いと腰に負担がかかるので、しっかりお腹に力を入れてください。
・脚が重くつらいようなら、片方の膝を立てて行ってください。
・外まわし、内まわしそれぞれ行います。

 

(立位)
立って行うことでバランスなどの負荷が高くなります。

股関節まわし

・立った状態で片方の膝をまわします。
・バランスが不安な場合は、必ず何かにつかまってください。
・できるだけ膝だけを回すようにして、腰が動かないようにしてください。
・外まわし、内まわしそれぞれ行います。

 

(2)椅子スクワット
10回 1セット

椅子から立ち上がるスクワットです。通常のスクワットより負荷が低く、スクワットがきつい方は、まずこれから始めてください。正しい立ち座りの動作の習得にもなります。

椅子から立ち上がり

・椅子に座った状態から、お辞儀をするように上体を前に倒します。
・足裏でしっかり地面を押して立ち上がります。
・上体は真っ直ぐを維持するようにしっかりお腹を締めてください。

 

(3)スクワット
10回 2セット

主に脚の筋トレですが、お腹や背中など体幹部の筋肉もしっかり鍛えることができます。快活に歩き行動できる体のためにスクワットは欠かせません。

スクワット

・腰幅よりやや広く立ちつま先は少し外側に向けます。
・股関節を曲げてややお尻を後ろに引くようにしゃがみます。
・膝はつま先人差し指と同じ方向になるように意識してください。
・お尻を膝の高さまで下ろしたら元に戻ります。
・背中が丸まらないように上体はまっすぐにキープ。

お尻まで下ろすのがきつい場合は浅く下ろすことで強度を下げることができます。
またバランスが不安な場合は必ず何かにつかまって行ってください。

 

(4)カーフレイズ
15回 2セット

ふくらはぎ(特に上部の腓腹筋)を鍛えるエクササイズになります。

カーフレイズ

・腰幅程度に立ち、つま先はまっすぐ。
・つま先側でしっかり地面を押してかかとの上げ下げをします。
・体が前後にフラフラしないようにまっすぐ立ったまま行います。

 

(5)オールフォーズ
30〜60秒 2セット

自分の体を支える筋力を強化するメニューです。疲れにくい体づくりやバランス改善には欠かせないメニューになります。

オールフォーズ

・四つ這いの姿勢を作ります。
・肩の下に手首、腰の下に膝が来るようにし、背中が丸まらないようにまっすぐをキープ(やや腰が反っている状態)
・しっかりお腹に力を入れてください。
・余裕があれば体格の手足をまっすぐ伸ばします。

 

食事で気をつけること

和食

歳を取ると徐々に食事量も減ってきます。食事量低下によるタンパク質やビタミン・ミネラルといった微量栄養素の不足には特に注意しないといけません。

 

不足に注意したい栄養素

・タンパク質
・カルシウム
・マグネシウム
・鉄
・亜鉛
・食物繊維

 

(1)タンパク質

タンパク質は筋肉や血液など体を構成している主原料です。加齢に伴い最も不足しやすいのがタンパク質です。

1日の摂取量目安(g)
男性 女性
推定平均必要量 推奨量 推定平均必要量 推奨量
50〜69歳 50 60 40 50
70歳以上 50 60 40 50

【おすすめ食品】

鶏肉、魚介類(青魚、タコ、イカ、エビ、貝類など)、卵、大豆食品(豆腐、納豆、豆乳)

 

【不足すると】

摂取するタンパク質が不足すると、筋肉などが分解されて不足分を補うので、筋肉量などが低下し体力低下、免疫力低下などを引き起こしてしまいます。また脳卒中の危険も高まります。

動物性タンパク質、植物性タンパク質をバランスよく摂るように心がけてください。

 

(2)カルシウム

高齢期になると骨量や骨密度が低下しやすくなります。骨粗鬆症にならないためにも、しっかりとカルシウムを摂る必要があります。

1日の摂取量目安(mg)
男性 女性
推定平均必要量 推奨量 推定平均必要量 推奨量
50〜69歳 600 700 550 650
70歳以上 600 700 500 650

【おすすめ食品】

じゃこ、しらす、小エビ(桜エビ、川エビなど)

 

【不足すると】

骨量の低下から骨粗鬆症、骨折のリスク増大、肩こりや腰痛、イライラしやすくなる

 

(3)マグネシウム

マグネシウムは現代の不足しやすい栄養素の一つです(高齢者に限らず全世代で)。

また、マグネシウムとカルシウムは拮抗関係になるので、カルシウムばかり多く摂っても体内で上手く作用されません。しっかりとマグネシウムも摂ることが骨の強化などにも重要です。

1日の摂取量目安(mg)
男性 女性
推定平均必要量 推奨量 推定平均必要量 推奨量
50〜69歳 290 350 240 290
70歳以上 270 320 220 270

【おすすめ食品】

大豆食品(豆腐、納豆、油揚げ)、アーモンド、カシューナッツ、海藻類(ひじき、わかめ)

 

【不足すると】

不整脈、動脈硬化、心疾患のリスクが高まる

 

(4)鉄

鉄も高齢者には不足しやすい栄養素です。鉄には動物性鉄分(ヘム鉄)と植物性鉄分(日ヘム鉄)があります。特に不足しやすいのは動物性鉄分ですので、鉄分を多く含む動物性食品を摂るようにしましょう。

1日の摂取量目安(mg)
男性 女性
推定平均必要量 推奨量 推定平均必要量 推奨量
50〜69歳 6.0 7.5 5.5〜9.0 6.5〜10.5
70歳以上 6.0 7.0 5.0 6.0

【おすすめ食品】

豚レバー、鶏レバー、大豆食品、ひじき、貝類、小松菜

 

【不足すると】

めまい、貧血、倦怠感

 

(5)亜鉛

新陳代謝に重要な亜鉛。味覚にも大きく関わっており、生涯食事を美味しく感じられる味覚のためにも、亜鉛不足には注意しましょう。

1日の摂取量目安(mg)
男性 女性
推定平均必要量 推奨量 推定平均必要量 推奨量
50〜69歳 10
70歳以上

【おすすめ食品】

牡蠣、うなぎ、豚レバー、種実類

 

【不足すると】

味覚障害、貧血、皮膚炎、免疫低下、うつ、精子量の減少

 

(6)食物繊維

栄養素とは少し違いますが、食物繊維は「高血圧、糖尿病、脂質異常、動脈硬化」など生活習慣病の予防に重要です。またがん予防にも効果的なことがわかっています。

1日の摂取量目安(mg)
男性 女性
目標量 目標量
50〜69歳 20以上 19以上
70歳以上 18以上 17以上

【おすすめ食品】

野菜、果物、豆類、きのこ類、海藻類とバランスよく摂ることが大切です。またダイエットなどで炭水化物を過剰に制限すると、食物繊維量も不足してしまうので注意が必要です。

 

【不足すると 】

便秘、腸内環境悪化、生活習慣病のリスク増大。

 

低栄養症状とは

高齢者の方に多いのは「低栄養症状」という状態です。加齢に伴い食事量が減っていき、必要な栄養素が不足している状態です。

体に必要な栄養素が不足しているということは、それだけ体の状態が低下していくということです。サルコペニアの大きな原因にもなりうるので、低栄養にならないような対策をしていかないといけません。

【低栄養の原因】

以下のような理由で食事量自体が減っていることが原因です。

・加齢による消化機能の低下
・噛む力の低下や歯の問題
・食への興味の薄れ

 

【低栄養状態になると】

・疲れやすくなる
・だるさ、ふらつき
・体重の減少
・足腰の不安定さ

最も顕著に現れるのは体重の減少(筋肉量、体脂肪量ともに)です。また疲労感や倦怠感を常に感じるようになります。

 

【低栄養の改善】

低栄養を改善することは食事量を増やして、たくさん食べることではありません。現在食べている量の中で、しっかりと必要な栄養素を摂取することです。そしてこれ以上食が細くならない対策をすることです。

無理に量を増やすと、胃腸に負担がかかり胃腸炎の原因になったり、より食が減ってしまう事態になってしまいます。起きている原因によっても対策は変わりますが、低栄養状態の人は原因はどうであれ、食べることに興味を失い気味です。

 

まずは食べることの楽しさを思い出すことです。そのためには次の2点を意識してください。

・楽しく食事できる雰囲気を作る
・好きなものを食べる

 

体のためにと無理をして食べても、余計に胃腸などを壊してしまうだけです。また栄養ばかり考えて好きじゃないものばかりを食べようとすると、食事が義務みたいになってしまい、余計食が細くなってしまいます。

好きなものを食べていく中できちんと必要な栄養素を摂取していく工夫と知恵が必要になります。

 

まとめ

超高齢化社会に伴い問題となってる介護や健康寿命といった話。どんなに気をつけていても病気になってしまうことはあります。しかし運動することで確実に寝たきりや介護のリスクを減らすことができます。まずは身体を動かす習慣をつけるようにしていきましょう。

 

参考文献
1.サルコペニア:定義と診断に関する欧州関連学会のコンセンサスの監訳とQ&A  厚生労働科学研究補助金(長寿科学総合研究事業)高齢者における加齢性筋肉減弱現象 (サルコペニア)に関する予防対策確立のための包括的研究 研究班
2.超高齢化社会におけるサルコペニアとフレイル 葛谷雅文 日本内科学会雑誌104巻12号
3.サルコペニアーそのメカニズムと防止策としての運動 石井直方
4.高齢者の栄養評価と低栄養の対策 葛谷雅文 日本老年医学会雑誌40巻3号
5.特定高齢者に対する運動及び栄養指導の包括的支援による介護予防効果の検証 日本公衆衛生雑誌58巻6号
6.栄養の基本がわかる図解辞典
7.自宅でできる自重筋力トレーニング 石井直方 荒川裕志
8.筋力バランストレーニング カラダ高性能エクササイズ100 佐藤拓矢

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